労働安全衛生法の一部改正で変わることは?働き方改革により面接指導の義務付け基準も変更に?

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ジャンル:ストレスチェック

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労働安全衛生法の一部改正に向けて、厚生労働省の労働政策審議会「安全衛生分科会」で審議が行われています。法改正は働き方改革の「実行計画」を踏まえたもので、長時間労働の医師による面接指導に関する変更や産業医や産業保健機能の強化などが含まれています。企業の人事労務担当者としては対応に遅れを生じさせないように、今のうちに改正のポイントを押えておきましょう。今回は、労働安全衛生法の一部改正について、社員の健康確保に関する変更を中心にご紹介します。

働き方改革によって社員の健康リスクが高くなる?

厚生労働大臣の諮問機関にあたる労働政策審議会は平成29年9月15日、残業時間の上限規制などを柱とする働き方改革関連法案の要綱は「おおむね妥当」という結論で厚労大臣に答申しました。法案には、高収入の専門職を労働時間の規制対象から外す「高度プロフェッショナル制度」や裁量労働制の拡大、また、成果で賃金を決める、いわゆる「脱時間給制度」なども含まれています。労働基準法改正案の1つである残業時間の上限規制は、長時間労働を抑制するために新設する罰則付きの規制です。しかし、仕事量の見直しや職場環境の改善が進まない状況であれば、残業時間を減らす手段として効率よく成果を出せる優秀な社員に仕事が集中する可能性もあるでしょう。

さらに、高度プロフェッショナル制度が導入されると一部の労働者には労働時間の規制がなくなるので、長時間労働が増え、健康を害する社員がむしろ増加する可能性も危惧されています。そのため、法案には、1年間に104日以上の休日を確保する義務を事業者に課すなど、社員の健康確保措置を拡充する案が盛り込まれました。


医師による面接指導は義務付け基準が変わる?

働き方改革による新制度の導入や拡充などに伴い、社員の健康確保は一層、重要なテーマとなりました。従来から行われている医師の面接指導についても、次のような改正が検討されています。まず、事業者側の義務としては、新たな技術や商品などの研究開発にかかる業務に従事する労働者に、厚生労働省令で定める時間を超えて労働させた場合、医師による面接指導を実施しなければなりません。
また、労働安全衛生法(66条の8)で定める面接対象の時間要件は、現行では時間外労働が1か月あたり「100時間超」ですが、今後、厚生労働省令が改正され、「80時間超」となる見込みです。一方、労働者側にも新たな義務が課せられます。現行の労働安全衛生法では、労働者に面接指導を受ける義務はありません。ところが、改正案では、新商品の開発などに従事する労働者で、厚生労働省令で定めた時間を超えて労働した人は医師による面接指導を受けることが義務となります。


労働安全衛生法の改正により産業医・産業保健機能を強化

事業者が行うべき健康確保対策としては企業における健康情報の取扱いルールの明確化、また、労働者が産業医などの産業保健スタッフに直接、相談できる環境整備などが検討されています。さらに、今回の一部改正では、産業医の機能強化に重点が置かれているのが特徴です。産業医の活動状況をみると、産業医の活動に必要な情報が企業から提供されていない、あるいは産業医の判断が企業側の意向に沿ったものになりやすいなどの課題があります。

そのため、改正案では産業医の独立性や中立性を強化し、産業医がより一層、効果的な活動ができるように必要な情報を提供する仕組みづくりなどが盛り込まれました。特に、産業医への情報提供については、すでに労働安全衛生規則が改正されています。平成29年6月1日より、事業者は、時間外労働が月100時間を超えた労働者の氏名や時間外労働の時間数などを産業医に報告する義務を負うことになりました。