勤労問題による自殺防止へ。「自殺総合対策大綱」素案について

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ジャンル:労務管理

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2007年に初めて閣議決定された「自殺総合対策大綱」は、5年に1度改訂されますが、その素案が公開されました。自殺者は減少傾向にあるものの年間2万人を超えています。勤務問題による自殺を防ぐため、労働基準監督署による監督指導をすること、パワハラ・セクハラ対策の強化、職場でのストレスチェックの徹底、子どもが周囲に助けを求める方法を学ぶ「SOS教育」の推進などが大綱の素案に新たに盛り込まれました。

「自殺総合対策大綱」の見直しの趣旨

自殺の要因は、経済や健康、生活や家庭の問題など様々なことが複雑に絡まっており、年間2万人を超える方が命を落としています。自殺未遂を繰り返したり、希死観念を強く訴える方もいます。自殺に追い込まれることは、誰にでも起こり得る危機だと考えられることから、2006年に自殺対策基本法が制定され、2007年に自殺総合対策大綱が閣議決定されました。

2016年の自殺対策基本法の改正後、大手広告会社の電通の過労自殺などを受け、自殺総合対策大綱は、誰も自殺に追い込まれることのない社会の実現に向けた更なる推進にむけ、見直しが行われます。見直しの主旨は、自殺対策を社会における「生きることの阻害要因(自殺のリスク要因)」を減らし、「生きることの促進要因(自殺に対する保護要因)」を増やすことを通じて、社会全体の自殺リスクを低下させる方向となります。


勤務問題による自殺防止対策

大手広告会社の新入社員が過労自殺した問題などを受け、自殺総合対策大綱には、勤務問題による自殺防止対策も重要であると考え、

①長時間労働の是正
②職場の精神保健対策
③ハラスメント防止

などを重点的に取り組む方針が明記されました。

素案には、労働基準監督署による監督指導、「働き方改革実行計画」も踏まえた長時間労働の是正やパワーハラスメントやセクシュアルハラスメント対策強化の推進、職場における労働者の心の健康対策としてストレスチェックの徹底などのメンタルヘルス対策の推進、産業保健と地域保健の連携として公的機関による電話やメール、直接訪問などの相談を充実させる、などが盛り込まれています。


若者へのSOS教育

自殺総合対策大綱の素案には「SOSの出し方教育」を推進することも含まれています。平成27年度版の「自殺対策白書」によると、10代は学生や生徒の自殺が多く、20代前半から後半にかけては、就職後の職場における仕事疲れや多様な人間関係などの「勤務問題」の比率が高くなる傾向にあります。若者はどこに相談したらいいか分からず、自分で抱え込んでしまい、自殺に追い込まれることも想定できるため、その他にも、スクールカウンセラー等の配置の推進や資質の向上、ICTも活用した若者へのアウトリーチ策強化、居場所づくりなども若者の自殺者を減らすための施策として素案に記載されています。


悩みを抱える支援者への支援の充実も

勤務問題などによる悩みを抱えている方は、どこかで誰かにその悩みを打ち明けていることはよくあることです。しかし、悩みを聞いた友人や家族がどのように対処したらいいか分からず、「気にしない方が良いよ。」などと言ったことで、本人が行き詰ってしまうこともありますし、苦しんでいる本人を支援できる家族などが、驚き、戸惑い、迷い、悩み、結果的に一番苦しんでしまうこともあります。悩みを抱える支援者への支援も、今後は大切になってくると考えられます。