保育士に必要なメンタルヘルス対策
ジャンル:労務管理
保育士に必要なメンタルヘルス対策
ジャンル:労務管理
厚生労働省研究班は、平成28年子ども・子育て支援推進調査研究事業として、2017年2月から3月にかけて保育人材確保に関する調査を実施しました。その結果から、2016年度にメンタルヘルスケアが必要だったり、実際に治療を受けたりした保育士が1人以上いた保育所が26.9%もあり、保育士が強い精神的負担を抱えていること分かりました。保育士の人材難や離職は問題化しており、研究班は、業務の負担軽減策に加え、メンタルヘルスケアなどサポート体制の整備が必要だと指摘しています。
保育所の保育士の働き方の特徴
男女ともに、子どもが好きという理由などで保育士になりたい方は多く、子どもの成長を身近で感じられる保育士は、今も昔も人気の職業の1つです。「大変やりがいのある仕事である」「やりがいのある仕事である」と感じている保育士は約36%、「今後も保育士として働きたいが就業継続が難しい」「今後は保育士として働きたくなく、保育士以外の職種で働きたい」は約9%であることからも人気度が分かります。
しかし、保育士の仕事は子どもと接することに加えて、子どもたちの保護者と子どもの様子を話し合うなどのコミュニケーションや、保育の報告書や日誌などを書く事務仕事も多いものです。そのため、子ども達と接することに精一杯の力を注いだ上に、事務仕事のための時間外労働が発生することもあります。
保育所の保育士が抱えるストレス
保育士には、保育経験や保育技術の他に社会性等のスキルも求められます。コミュニケーション能力は88%、社会性は81%、モラルは78%の施設で求められています。保育所の近くに住む保育士は日常も保育士とみられ、オンとオフが付けにくいこともストレスの1つです。男性保育士も増えてはいますが、保育所は比較的女性が多い職場であることも特徴で、職場の人間関係からのストレスや、保護者とのトラブルもストレスとなります。
そして、忙しく残業が多くて休みも取りにくいとしたら、休息が不足し体が疲れていきます。体の疲れは続くことで、ストレスが解消しにくくなり、心も疲れ始め、人との関わりがしんどくなることもあります。「子ども達のために自分がもっと頑張らなければ」と働き続けることが、メンタルヘルス不調に繋がることもあるのです。
保育士の処遇改善とメンタルヘルス対策
保育士が長く健康で働き続けるためにはどのような対策が必要なのでしょうか。厚生労働省研究班の調査では、業務環境で改善したい課題としては、給与賞与の改善(65%)、職員数の増加(52%)、事務雑用の改善(50%)、休暇の確保(48%)などでした。また、回答した2,672施設のうち、メンタルヘルスケアが必要な保育士が1人以上いる保育所は719施設(26.9%)ありましたが、相談支援やストレスチェックなどメンタルヘルスケアのサポート体制がある保育所は1084施設(40.6%)で半数を下回っています。さらに、ストレスチェックの実施が予定のない保育所が832施設(31%)ありました。
2015年12月から従業員50人以上の企業はストレスチェックが義務化されましたが、小規模な保育所は対象外となるため、予算や時間がないという理由でストレスチェックを諦めている民営の保育所もあります。助成金を活用してストレスチェックを実施し、保育所の職場改善をすることも、保育離職者を減らす1つの施策となります。ストレスチェックを実施したいが、進め方がわからないという場合には、ストレスチェック提供会社に相談してみましょう。職場改善とメンタルヘルス対策はストレスチェックから始めるのが近道です。