筑波研究学園都市における研究者の職場ストレスと自殺念慮
ジャンル:その他
筑波研究学園都市における研究者の職場ストレスと自殺念慮
ジャンル:その他
筑波研究学園都市交流協議会は、茨城県の筑波研究学園都市で働く研究者や技術者などの職員を対象にしたメンタルヘルス調査を5年ごとに実施しています。平成29年2~3月に行われた「第7回生活環境・職場ストレス調査」をみると、過去に自殺を考えたことがある人は26.4%で、厚生労働省の全国調査を上回っていました。ここでは、教育・研究系の職員に焦点を当てて職場ストレスの増強要因や緩和要因、自殺を考えた経験などについて紹介します。
教育・研究系職員にとって仕事の量的負荷はストレスの増強要因
筑波研究学園都市交流協議会の「生活・職場ストレス調査」では、職場ストレスの増強要因として「量的負荷」「質的負荷」「対人関係」を取り上げ、性別や職種による比較を行っています。ストレス増強要因は、数値が高いほどストレス強度が高いことを示すものです。
平成28年度の調査結果(速報)をみると「対人関係」に男女差はみられませんが、「量的負荷」と「質的負荷」は男性の方が女性より高い値でした。
【男性】 量的負荷 2.37点 : 質的負荷 2.43点
【女性】 量的負荷 1.94点 : 質的負荷 1.98点
また、教育者や研究者の量的負荷(2.45点)、質的負荷(2.44点)は技術系や事務系の職員より高く、特に量的負荷は職種によって大きな開きが認められました。
教育・研究者のストレスは仕事の裁量度や達成感で緩和
職場ストレスを緩和する要因は、「裁量度」「達成感」「同僚・上司の支援」の3点から分析しています。ストレス緩和要因は増強要因とは逆に、数値が低いほどストレス強度が高いことを示します。男性の「裁量度」、「達成感」はいずれも女性の値をやや上回るものでした。
【男性】 裁量度 2.86点 : 達成感 2.91点
【女性】 裁量度 2.66点 : 達成感 2.64点
職種別では、教育・研究系の「裁量度」、「達成感」は他の職種より高い値でした。ストレス増強要因と緩和要因の調査から、教育者や研究者は量的にも質的にも負荷の大きい仕事をしていますが、裁量度が高く、仕事によって達成感を得ていることがうかがえます。
およそ4人に1人は過去に本気で自殺を考えた経験あり
自殺念慮については、第7回目の調査から厚生労働省の「自殺対策に関する意識調査」にならう形で行われています。「これまでの人生の中で、本気で自殺したいと考えたことがありますか」と尋ね、回答は被検者の負担感を考慮して「無回答」を設けた3肢択一となりました。筑波研究学園都市交流協議会の調査結果をみると、「自殺したいと思ったことがある」という人は1,096人でした。
分析対象者全体(4,154人)に占める割合は26.4%となり、厚生労働省の平成28年度調査23.6%(*1)を3ポイントほど上回っています。自殺念慮の有無を年代で分けると、もっとも高かったのは20代で「経験あり」の人が31.8%、次に高かったのは30代の30.8%でした。職種別では、教育・研究者のうち「経験あり」は23.6%ですが、技術系は28.0%、事務系は29.3%でおよそ3割を占めています。
【出典元】筑波研究学園都市交流協議会 労働衛生専門委員会:第 7 回生活環境・職場ストレス調査結果(速報)、平成 30 年1月、p11 のデータを基に作成
*1:厚生労働省「平成28年度 自殺対策に関する意識調査」p49
20代では最近1年以内に自殺を考えた人が3割超
自殺念慮の経験がある人(1,096人)の中で「最近1年以内」に自殺を考えたという人は246人。自殺念慮の経験者に占める割合は22.4%で、平成28年度の厚生労働省調査(18.9%)より2.5ポイントほど高率でした。最近1年以内に自殺を考えた人を年代別にすると、20代では自殺念慮の経験者に占める割合は31.9%、厚生労働省の調査も20代は32.6%(*2)を占めています。
いずれの調査でも20代がもっとも高いことを考えると、若年層の自殺対策が急務といえるでしょう。また、職種別では事務系(23.7%)も、教育・研究系(23.4%)も2割超の人が最近1年以内に自殺を考えた経験があると答えています。
【出典元】筑波研究学園都市交流協議会 労働衛生専門委員会:第 7 回生活環境・職場ストレス調査結果(速報)、平成 30 年1月、p11 のデータを基に作成
*2:厚生労働省「平成28年度 自殺対策に関する意識調査」p51