ウェアラブルセンサによる生体情報を用いて社員の長期ストレスを可視化

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ジャンル:労務管理

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従業員のストレス状態を把握する方法としては、ストレスチェックのようにアンケート方式が主流です。しかし、長期的なストレスの変化を把握するためにはある程度、頻繁に検査を行う必要があるので社員にも負担がかかります。近年、さまざまなウェアラブル端末が開発されていますが、NECのリストバンド型ウェアラブルセンサを装着すると従来は難しかった高ストレスの兆候も把握可能となりました。社員の健康管理への活用などが期待できるNECの新技術について紹介しましょう。

従来のストレスチェック方法にはさまざまな課題があった

職場で生じるストレスは、大きく分けると短期ストレスと長期ストレスがあります。このうち、短期ストレスはプレゼンテーション直前のように短期的なストレス刺激をいい、血圧の変化や呼吸数の増加などが現れるものの課題などが終了すれば落ち着くのが一般的です。

ところが、険悪な人間関係や継続的な仕事量の増加などによって生じる長期ストレスは、身体的な変化がなかなか通常レベルに戻らず、場合によっては心身の不調を来すこともあります。そのため、多くの企業では定期的なアンケート調査により長期ストレスを把握し、メンタルヘルス対策に役立てています。アンケート調査は長期ストレスを細かく把握できるのが大きなメリットです。

しかし、実施回数を増やすと社員に負担となるため頻繁な調査が難しく、高ストレス者の把握が遅れるといった事態を招きます。

また、従来のウェアラブルセンサを用いたストレスチェックの場合、ストレスの程度が高いか、低いか2段階の区別は可能ですが、高ストレスの兆候を検知できないという課題がありました。


高ストレスの兆候も把握できるNECの新技術とは?

NECが開発した新技術では、ウェアラブルセンサによって得られた生体情報(皮膚温度など)の時間経過による変化から長期ストレスを6段階まで高精度に推定できるようになりました(図1)。

図1 長期ストレスを把握し「高ストレスになることを未然に防ぐ」
図1 長期ストレスを把握し「高ストレスになることを未然に防ぐ」

長期ストレスの推定には心理学の知見(※1)から新たに見出された「生体情報の特徴」を用いて、ウェアラブルセンサで得た生体情報の中から「特徴量」を抽出します。生体情報の特徴量を抽出し、時間経過による変化を捉えることによって長期ストレスの細かな差異の測定が可能となったのです。

細かな差異を測定できることによって従来の技術では2段階に留まっていた長期ストレスを6段階に区別でき、高ストレスの兆候も把握可能となりました。

※1 心理学の知見:二次的なストレス評価「一時的に大きなストレスを受けると、その後ささいなことにもストレスを感じてしまう」


ウェアラブルセンサの装着で働きながらストレスチェック

NEC社内での新技術を用いた実験では、従来のウェアラブルセンサによるストレスの推定に比べ、長期ストレスをより正確に推定できたとされています(図2)。

図2 生体情報の時間経過による変化を捉えることによる推定精度向上の例
図2 生体情報の時間経過による変化を捉えることによる推定精度向上の例


また、NECはアンケート調査で得られたストレス値との比較においても長期ストレスを高精度に推定可能なことが示されたとして、都内で開催された「2018年電子情報通信学会総合大会」などで発表しています。

リストバンド型ウェアラブルセンサの場合、通常の業務中にセンサを装着しておけばよいので、アンケートのように時間や手間をかける必要はありません。新技術により長期ストレスの細かい区別が可能になったことで、社員に大きな負担をかけずストレスの増加を早期に発見し、早い時点で必要な対処につなげられると期待されています。