職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会」の報告書の概要

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ジャンル:労務管理

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職場のパワーハラスメント(以下「パワハラ」)は、相手の尊厳や人格を傷つける許されない行為です。パワハラによって職場環境が悪化し、パワハラを受けた人は仕事への意欲や自信を失い、次第に心身の健康が奪われていきます。厚生労働省では「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会」が行われその報告書が公表されましたのでお伝えします。

パワハラの現状とその要因

平成28年度に都道府県労働局に寄せられた相談は70,917件でした。その中で最も多い相談は、職場のいじめ・いやがらせに関することであり、この相談は増加傾向にあります。厚生労働省が実施した「平成28年度職場のパワーハラスメントに関する実態調査」の結果によれば、従業員の32.5%が過去3年にパワハラを受けたと回答しています。

パワハラ発生の要因は労働者個人によるものと職場環境の問題によるものがあり、労働者個人の問題としては、行為者は感情をコントロールする能力やコミュニケーション能力が不足していること、受け手は社会的ルールやマナーを欠いた言動もあると考えられています。職場環境の問題としては、業績重視の評価制度や長時間労働、労働者同士のコミュニケーションの希薄さなどもパワハラが発生する要因だと考えられています。


職場のパワハラの具体的内容

職場のパワハラとは、職務上の地位などの職場内の優位性を背景に、同じ職場で働く者に対して、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与えたり職場環境を悪化させたりする行為だと報告書には示されています。

つまり、パワハラには、

 ①優越的な関係に基づく、
 ②業務の適正な範囲を超えている、
 ③身体的や精神的な苦痛を与えたり、就業環境を害したりすること、

の3要素があるのです。

パワハラとなる具体的な行為としては、暴力により傷害を負わせること、著しい暴言を吐くなど人格を否定すること、何度も大声で怒鳴り厳しい叱責を執拗に繰り返して恐怖を感じさせること、長期間に渡る無視や能力に見合わない仕事を与えて就業意欲を低下させる、などとなります。人格否定や恐怖感などは、平均的な労働者が感じる苦痛が基準とされるため、労働者個々の感じ方や働く業種や業態によっても異なると考えられていますので、さらなる事例の収集が必要だと検討会では意見が出ています。


パワハラ防止策の強化

厚生労働省の「平成28年度職場のパワーハラスメントに関する実態調査」より、52.2%の企業がパワハラの予防・解決に向けた取り組みを実施しています。パワハラを含めた職場におけるいじめや嫌がらせによる心理的負荷で発病した精神障害は労働者災害補償保険法(労災)に基づく保険給付の対象となる場合もあります。

さらに検討会では、以下のような規定の創設を求める意見も出ています。・行為者の刑事責任・民事責任(刑事罰・不法行為)・事業主に対する損害賠償請求の根拠の規定(民事効)・事業主に対する措置義務・事業主による一定の対応措置をガイドラインで明示・社会機運の醸成事業主にはパワハラ防止策として、パワハラの事実関係について迅速かつ正確に確認し、被害者への配慮を適正に実施し、行為者に対する対応を適正に実施し、再発防止に向けた対策を立てそれを実施することなどが求められます。


パワハラ対策に取り組む意義

職場のパワハラ対策を講ずることで、コミュニケーションの円滑化が図れ、労働者の生産性や意欲が向上していきます。職場においてパワハラの予防・解決の取り組みが進むと、休職者や離職者が減少し、メンタルヘルス不調者が減少します。

パワハラ防止対策は、職場の活力や生産性を向上させ業績が上がることに加え、企業の社会的信用度が高まる対策といえます。