【レポート】それは休憩? それともサボり? 「正しいサボり方」で自分の健康を守ろう!

【レポート】それは休憩? それともサボり? 「正しいサボり方」で自分の健康を守ろう!

ジャンル:その他

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●なぜ今、企業の「健康経営」が求められているのか?
経済産業省と東京証券取引所は共同で、従業員の健康管理を経営的な視点から考え、戦略的に取り組んでいる企業を「健康経営銘柄」として選定する取り組みを実施している。今年の1月には、第2回となる「健康経営銘柄」が発表され、25社が選定された。今後、少子高齢化時代が続く日本では、生産性を上げるためにも、従業員の心と身体の「健康」を守ることが、企業は求められてきているのだ。

こうした状況の中、すでに「健康経営」を意識して取り組みを行っている企業がある。その1社がカヤックだ。カヤックといえば、さまざまなデジタルプロモーションを手がけ、数々の受賞暦を持つクリエーティブ集団といった印象ゆえか、「面白法人」と言いつつも、ものすごくハードに仕事をしているようなイメージがある。「健康経営」とは程遠いのではないだろうか…?

しかし、同社社長の柳澤大輔氏は「カヤックが考える健康経営」について、自身のブログで想いを語っている。今年の1月に投稿されている内容を一部抜粋した。

法人において健康であるということはどういうことなのか。人間がつくった人工物としての法人の健康というものを単純に考えると、それは財務的な観点からの良し悪しがその指標になると言えると思います。事業を営むための人工的な生き物なので、財務状況が悪いと死に至ります。

ただ、いくら人工物であっても、結局その法人をつくりだしている1つ1つの要素は、人間です。財務という指標だけで突き進めば、時に一人ひとりの人間の健康を損なうという事態が起きてしまう。そこに対しても法人は何らかのサポートをする必要がある。そういう時代にこれからなるんだろうと思いますし、だからこそ、「健康経営」というキーワードが誕生し、昨今頻繁に耳にするようになったのではないでしょうか。

「健康経営」という言葉には、法人の財務状況をよりよくするという意味ではなく、その組織で働く社員個人の健康に気をつける経営という意味が込められています。だから正確には「働く社員一人ひとりを健康にする経営」ということなのだと思います。

「面白法人カヤック社長日記」カヤックが考える「健康経営」の話。より抜粋
柳澤氏は今年、「健康経営」というキーワードを「取り組むべき重要なテーマの1つ」として位置づけているという。この方針のもと、先日同社ではある研修が行われた。題して「正しいサボり方研修」である。

今回は、この研修で語られた内容を紹介していこう。

●「休むほうが仕事がはかどる」科学的根拠
○「サボる」ということは?

「正しいサボり方研修」では講師として、スタンフォード大学 医学部睡眠・生体リズム研究所 客員講師を務める精神科医・医学博士の西多昌規先生が招かれた。

まず「サボる」という行為についてだが、ウィキペディアで「サボる」を検索すると、「サボるとは、仕事などを怠けること。 過失に見せかけ機械を破壊する、仕事を停滞させるなどして経営者に対し損害を与えることで事態の解決を促進しようとする労働争議の一種であるフランス語のサボタージュ(sabotage)を動詞とした造語」と書かれている。これに対し西多先生は、「フランス語のサボタージュのレベルでは日本では使われていない。日本での意味にすると、『過重労働のわりに効率がさっぱり上がらない日本の労働環境をサバイバルするため、有志が独自に編み出した生存戦略』といったところだろう」と皮肉めいた。

エクスペディアジャパンが毎年実施している「有給休暇・国際比較調査」によると、日本の有給取得率は、26カ国中、韓国に次いで低い状況となっている(2015年結果)。しかし、「休み不足を感じている人の割合」は39%と低く、さらに「自分の有給支給日数を知らない人の割合」は53%と、他国に比べて圧倒的に高い割合となっている。ちなみに、韓国では23%、アメリカでは16%という結果だ。

これが進んで仕事をしているような状況であればよいものの、「仕事に満足していている人の割合」は17%と低い。にもかかわらず、「休暇中も仕事が頭から離れない人の割合」は13%と、こちらも他国と比べて高い結果となった。

このような状況の中、「若い人の死因の1位は自殺。20代や30代は、メンタルに気をつけなければいけない」と、西多先生は注意を促した。また「生産的に"サボる"。こういう考え方があってはいいのではないだろうか」と語った。

○「休む」ということは?

日本では「休むこと=悪」とされる風潮があるが、西多先生は「休む方が仕事がはかどる科学的な根拠がある」という。

ぼーっとしている時と仕事をしている時を比べると、仕事をしている時の方が頭を使っているように思われがちだが、実は逆なんだそうだ。ある研究結果によると、ぼーっとしている時の脳のエネルギー消費は通常思考時の約15倍もあるという。

つまり、ぼーっとする時間をつくらずに働き続けていると、脳が活性化する時間がないため、大事な活動ができなくなってくるというわけだ。

しかし、全く何もしないというのも、実はよくないのだという。あるクリエーティビティ能力を測る実験によると、「休憩しながらどうでもいい作業をしている」時が、最もアイデアが生まれる結果となったという。

「現代人だとスマホ遊びなどをしながら休憩するのがちょうどよいだろう」と西多先生は言う。

●自分のストレスを知る
○適度な疲労は必要

西多先生によると、「疲労」には大きく分けて3種類あるという。1つめは「肉体的疲労」。2つめは「脳疲労」。3つめは「人とのコミュニケーションによる疲労」だ。いずれも、過度な状態はストレスの原因となるが、適度な疲労は必要だという。

「脳疲労」については、前項の実験結果からも言えるように、まったく何もしないよりは、簡単な作業をしていた方が活性化するようだ。一方、「脳は臨床心理の分野では"メンタル"として捉えている」と西多先生は説明した。つまり、「脳疲労」が過度な状態になると、メンタルに影響を及ぼし、うつ病を発症する危険性があるわけだ。「休憩時間が少ない」「仕事の拘束時間が長い」といった状況は、メンタルへ影響を及ぼす要因となっているという。

「肉体的疲労」については、「身体を動かすと、疲労因子FFと疲労回復因子FRが生成され、適度な運動をすれば疲労回復因子FRの方が多く生成される」とのことだ。

「人とのコミュニケーションによる疲労」については、「現代ではどのような場面でも"コミュニケーション能力"が求められ、それがストレスを生む原因となっている。しかし、人との関わりは人間の幸福感も生み出すもの」と語られた。では、ストレスをためないようにするには、どうすればよいのだろうか? 西多先生は次のように説明した。

「『人から言われてやらされている』『自分のためになっている気がしない』と感じると、ストレスとして認識される。ストレスに強い人は、ストレスを見直す力がある人。『これは自分のためになっているんだ』と思って取り組むことで、ストレスの再設定が行える」

○必見! コンピューター関連職に特化したストレスチェック

昨年12月には、「ストレスチェック制度」が施行となり、従業員数50名以上の企業では、従業員のストレスをチェックすることが義務化された。

厚生労働省では、ストレスチェックの項目として、57項目の「職業性ストレス簡易調査票」を提供しているが、西多先生は、コンピューター関係の職種の人に特化したというストレスチェック項目を提示した。これは、大阪経済大学の田中健吾先生が考案したもので、これによる実際のストレス判定の基準などは、まだ具体的に示されていないとのことだが、下記の15項目がこれにあたる。

・仕事のスケジュールがころころ変わる
・休憩時間が少ない
・仕事の持ち場が絶えず変わる
・残業時間の多い職種である
・納期に追われて仕事をしている
・作業時間が長い
・将来的にこの仕事を続けているかわからない
・雇用形態が不安定である
・いつも出向先で仕事をしなければならない
・いくら仕事をがんばっても給与に反映されない
・見通しを立てにくい仕事だ
・徹夜で残業することがある
・緊急のトラブル対処が求められる
・対人関係を良好に保つことが難しい業務だ
・拘束時間が長い

上記項目に対して、

1. まったく当てはまらない
2. あまり当てはまらない
3. どちらでもない
4. やや当てはまる
5. かなり当てはまる

で回答し、その点数によってストレス度合いを測る。

「まだ何点以上からはよくないといった指標はないが、75点満点中70点以上だと、やばいのではないだろうか」(西多先生)

とは言え、なかなか自分で仕事量や勤務時間などをコントロールすることは難しいだろう。こうした問題に対し、西多先生は、「まずできることからやっていくことが重要」だとした。

例えば、肉体面の疲労を抑えるためには、骨盤矯正ベルトやブルーライトカットのメガネなど、現在さまざまな健康機器が販売されており、それらを活用するのは手である。メンタル面に気をつけるには、「休日の間に次の休暇の計画を練ることがポイント」と、西多先生は話した。

「平日だと、休日の計画をする余裕がなくなる。休みのうちに、次の休みの計画をしておくことが重要」(西多先生)

*  *  *

以上が、西多先生による研修の内容となる。

研修後、カヤックでは「カヤックメンバー全員がやりたくなる、健康でいられるアイデア」をお題に、ブレストが行われた。その中で出てきた案が以下となる。

・オフィスのデスクが卓球台
・スクワットをしながらブレストする
・「お前休み!」と他人から突然言い渡される「どっきり休暇」
・自分の名刺に健康法を書く
・夢の中で思いついたアイデアが採用されると残業代がつく「夢残業」
・雑務をビュッフェ形式でやりながら休憩する
・疲れてくるとマウスカーソルが重くなり、自分では気づきにくい疲れを機械で察知
・給料の代わりにバナナなどがもらえる「栄養補給(料)」

読者の皆さんも、西多先生の言う通り、「まずはできることから」始めてみてもらいたい。

(石原由起)

http://news.livedoor.com/article/detail/11296009/より転載)
[2016.03.15]