あまり知られていない、心の病気による労災補償の状況

あまり知られていない、心の病気による労災補償の状況

ジャンル:労務管理

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心の病気にかかった従業員のケアは、非常にデリケートなもの。それにも関わらず、精神論を通したがる上司・同僚がいることに、悩まされている方もいるでしょう。現代の社会においては、実際に心の病気で休職退職してしまう方も少なくありません。
そこで今回は、現代社会で必要性が高いとされている「心の病気による労災補償」を解説します。

■心の病気は労災になる?

結論から述べると、心の病気は労災の認定対象になり得ます。心の病気が労災として認められるには、大きく分けて以下の3つの認定基準があります。

1.認定基準の対象となる精神障害を発病していること

2.発病のおおむね6ヶ月間のあいだに、発病の原因となるような業務上の負荷が労働者にあったこと

3.業務以外の要因によって発病したと考えられないこと

上記の認定基準から考慮すると、

・家に帰ることもできないほどの残業や無賃金労働を強制された

・パワーハラスメントやセクシャルハラスメントによる日常的ないじめがあった

・過去に精神疾患の病歴がなく、仕事以外の生活に変わりは無かった

上記のケースに当てはまる場合には、「仕事が原因の疾病=労災」と認められることになります。

■昨今の精神疾患によ労災補償状況は?

心の病気による労災認定の請求件数は、毎年増加を続けています。平成26年度の集計結果では、「申請件数・認定件数」ともに過去最多となりました。
平成21年度で1,136件であった請求件数は、平成26年度には1,456件まで増加。同時に、労災の認定数と請求件数に対する認定率も増加しています。
平成21年度の認定率は27.5%の234件でしたが、平成26年度には38%の497件となっています。つまり、心の病気が労災と認められる件数が、「5年間で2倍以上」になったのです。
それにも関わらず、メディアにおいて精神疾患による労災認定が大きく報道されているとは言えません。これは、現代ではすでに「珍しい事例ではなくなっている」ことが原因のひとつとされています。

■こんな時代だからこそ、ストレスチェックが重要

実際に精神疾患者になったとして、必ずしも労災認定を受けられるわけではありません。また、労災認定を受けたとしても、労働者の心には傷が残りますし、いつ治るのかも分かりません。
そのような背景があり、未然に従業員の心の病気を防ぐ「ストレスチェック」が義務化されました。これは、事業者に対して平成27年12月より施行されるものですが、決して精神疾患者のあぶり出しなどを目的としているわけではありません。
この制度の主な目的は、

・従業員の無自覚なストレスを発見すること

・ストレスの原因を突き止め、職場環境を改善すること など

とされています。

■おわりに

心の病気や疲れは、ケガのように外見から分かるものではありません。その上、1度精神疾患を発症してしまうと、短期間では回復させることは大変難しいです。そのため、事業者や従業員がストレスチェックに積極的になり、少しずつ職場を改善していく姿勢が大切です。