初年度のストレスチェックを振り返る。実施済み企業は全体の45%
ジャンル:ストレスチェック
初年度のストレスチェックを振り返る。実施済み企業は全体の45%
ジャンル:ストレスチェック
平成27年12月から始まったストレスチェック。実施義務のある従業員50人以上の企業のうち、どの程度の企業がストレスチェックを実施しているのでしょうか。エン・ジャパン(株)が行った調査では実施済みは45%で、相談体制の構築や医師面談の拒否などのいくつかの課題が明らかとなりました。ストレスチェック制度の実態として実施上の課題や企業の担当者の声などをご紹介しましょう。
準備中も含め実施は9割!一方で実施予定のない企業も?
エン・ジャパン株式会社は「エン 人事のミカタ」上で従業員50人以上の会社を対象にストレスチェックの実施状況などを調査しました(調査期間:2016.8.24~9.20)。その結果、ストレスチェックの「実施済み」の企業は45%、「準備中」は44%で「実施の予定がない」「わからない」はそれぞれ5%でした。実施予定がないという企業は、その理由として情報収集はしているが手が回らない、人手不足のために後回しになっているなどを挙げています。また、実施済みと準備中の企業に「ストレスチェックを義務化する上での困難な点」を尋ねると「体制構築」「全社員の実施」「医師面談の拒否」が上位を占め、いずれも42%でした。ほかに、個人情報の保護や会社に結果が通知されないことに困難と感じる企業も少なくありませんでした。
ストレスチェック実施上の課題(1)
体制構築体制構築とは、ストレスチェックを行う体制や相談窓口などの構築についてです。回答者からは「手順が面倒で現場が理解できない」「人員を割けない」、また、「非常に手間がかかる」などの意見がありました。さらに、ストレスチェックの回答の信ぴょう性を心配する声もでています。ストレスチェックは社員が自分で答える質問紙調査のため、回答を意図的に操作してしまう可能性は否定できないでしょう。受検者が安心して回答し、現在の状況を適切に把握するには、自社の衛生委員会などでプライバシー保護を含め実施方法について慎重に審議することが大切です。また、ストレスチェックの結果は本人の同意なしに事業者に伝えることはできませんが、社員の不安を軽減するには外部委託なども検討するとよいでしょう。
ストレスチェック実施上の課題(2)
全社員の実施ストレスチェックの対象となる社員全員に実施することについて、匿名で実施するため未受検者が把握できないなどの意見がありました。また、複数の拠点をもつ企業では各拠点で医師を確保し、社員に周知するのは難しい、受検することで「不利益な評価につながるのでは」と考えて受検しない社員もいると答えた企業もあります。厚生労働省の「ストレスチェック指針」をみると、事業者は実施者から未受検者のリストを得て受検の勧奨ができるものとしています。また、受検したかどうかの情報を実施者が事業者に提供することについては、社員本人の同意は必要ありません。このようなストレスチェックの実施方法を、事業者や実施者が適切に理解することで改善できる課題もあるようです。
ストレスチェック実施上の課題(3)
医師面談の拒否高ストレスと判定された社員に対する医師の面談は、本人からの申出が必要です。そのため、業務の繁忙を理由に医師面談を申し出ないのではないか、会社の人事部に申し出ること自体が困難なのではないかなどの意見がありました。ストレスチェック指針では面接指導が必要な人には申出方法などを伝え、申出がない場合は実施者が申出を勧奨することが望ましいとしています。また、実施事務従事者に限り申出の勧奨ができるので、強要にならないように配慮しつつ勧奨するとよいでしょう。
ストレスチェックの実施による効果とは?
実施済み企業のおよそ46%が、社員のストレス状況を「大まかに把握できた」といっています。また、管理職が部下のストレス緩和に、さらに、社員自身もストレス緩和に関心をもつようになったなどの声もありました。しかし、形だけの実施で効果がないとする否定的な意見も。ストレスチェックは今後も毎年1回の実施が必要になるので、初年度に感じた課題に対して他社の実施例を参考にしたり、外部機関の利用を検討したりするとよいでしょう。自社に合ったより効果的な実施方法を早い時期に探り、今後の検査に備えましょう。