杭打ちできない建築業界のストレスと労災状況

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ジャンル:労務管理

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最近世間の注目が集まっている建設業界。杭打ちデータの改ざんに関する一連の事件は記憶に新しく、現在でも芋づる式に新たな問題が発覚する事態になっている。業界の闇が深いことは、新聞やテレビで連日報道されている通りだ。
今回の事件の背景には、建設業界の厳しい就業環境があると言われている。実際に、同業界の精神障害に対する労災補償の請求件数は増加傾向にあり、今年の総数はなんと前年の2倍にまで膨れ上がっている。
建設業界の現場がこんなにもストレスフルな理由はどこにあるのだろうか?
精神障害になってしまった従業員にその原因を調査してみると、以下のような順位になった。

1位:仕事の量や質

2位:事故や災害の体験

3位:対人関係

1位の「仕事の量や質」は、非常に根深い問題である。建設業界は、バブル崩壊やリーマンショックを受けて仕事が激減し、それに伴って人材をどんどん削減してきた。しかし、近年では業界が勢いを取り戻しつつあり、今度は逆に深刻な人材不足に陥ってしまったのだ。これによって、従業員一人ひとりにのしかかる仕事の量や責任は増加している。早急に解決すべき重大な課題ではあるものの、企業だけの努力では難しいというのが実情。国を挙げての補助が必要となっている。
また、2位の「事故や災害の体験」も、建設業界ならではと言えるだろう。取り扱いに注意が必要な機材を使用したり、高所などの危険な場所で作業をしたりすることも多く、現場の従業員は常に命の危険と隣り合わせで働いている。安全の確保に一層配慮することが求められる。

1位・2位と異質なのが、3位の「対人関係」だ。これは建設業界に限った問題ではなく、企業ごとの努力で改善が見込める。

まだまだ男性社会で体育会気質が残る建設業界だが、そういった風土は極めて時代錯誤だ。一人ひとりが気持ちよく働ける職場を目指し、変革することが求められている。新たな人材の確保だけでなく、今いる貴重な人材を守るための対策は欠かせない。

その具体的な方法の1つに、ストレスチェックが挙げられる。ストレスチェックとは、複数の簡単な質問に回答することでストレス度合いなどを計測するもので、本人も気づいていないストレス負荷を発見できる。また、ストレスが過度にかかっているチームを見つけることもでき、職場環境の改善にも役立つ。

なお、ただストレスチェックを実施しただけでは、十分な効果を上げることは難しい。従業員に対して事前に実施意図を説明したり、回答内容が直属の上司に伝わらないように工夫したりするなど、正確に事実を把握できるやり方で行うことが大切だ。豊富なノウハウを持つコンサルティング会社にアドバイスを求める方法もおすすめしたい。

今回の杭打ち問題を機に、建設業界が抱える職場環境の問題に図らずもスポットライトが当てられた。これを業界立て直しの好機と捉え、世間の目が向けられているうちに改善を図ることで、業界のイメージ刷新を目指したいところである。